AVORIAZの消したくなかった傷
磨いて残す、「傷の記憶」という贅沢。
靴には傷が入りますが、ネガティブに捉えてはいけません。傷の一つ一つが記憶であり、深い傷ほど愛情が詰まっています。今回お預かりした『Paraboot AVORIAZ』は、お子さんと遊んでいる時につけてしまった傷──いや、これは「ストーリーマーク」のお話。
靴好きのお客様ギッタ君から、ある日インスタDMでご相談がありました。
「相棒ブーツ『Paraboot AVORIAZ』に傷が入ったので見てもらえませんか?」
事前に写真も送ってくれて、こちらは状況を把握しやすい。…のですが、届いた画像を見た瞬間、私は思わずニヤリ。
“深い傷”って、だいたい物語の入口なんですよね。
たしかに深い。ですが話を聞くと、お子さんと遊んでいた最中にできた傷とのこと。
はい、決まりです。これは消す傷じゃない。残すべき傷。
ただし放置はしません。汚れを落とし、表面のコンディションを整え、艶と陰影で“傷の意味”を引き立てる。言うなれば、傷を主役にする舞台装置を作る感じです。
しかもギッタ君、丁寧に汚れを落として来てくれたので作業が捗る捗る。職人の心が静かに燃えます。…いや、わりと燃えてました。
磨きながら出た結論は、こう。
この傷は、傷であって傷ではない。『ものがたりの詰まった痕跡』つまり「ストーリーマーク」。
見れば当時の空気が蘇るはずです。しかもAVORIAZは、武骨な顔なのに磨くとちゃんと色気が出るタイプ。だから「残す」と「美しくする」が両立できる。これ、意外と簡単じゃありません。
結果、最初の状態よりも美しく。でも、肝心の傷はそのまま。
この傷を見るたびに、きっとギッタ君は思い出す。お子さんの笑い声とか、走り回った時間とか。
そう考えると、私ができるのは“消す”じゃなく“整える”。靴は新品に戻す道具じゃなく、人生を連れて歩く道具ですから。
同じように「消したくない傷」を抱えた相棒がいる方、ぜひご相談ください。こちら、物語を磨くのは得意です。




コメント
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natoriya
が
しました