珍しいALDEN 974 WING TIP コードバンのメンテナンスをご依頼いただきました。このモデルは、実のところ当店でもこれまで扱ったことがなく、非常に興味深く、嬉しい挑戦となりました。木型は……これはなんでしょうね?バリーラストかな?トレモントという説もあるようです。うーん、どちらでしょうか。

2503161920-6

今回のメンテナンスでは、シェルコードヴァンならではの美しい艶を引き出す方向で手を加えました。普段からしっかりお手入れされていることがうかがえ、革のコンディションも非常に良好でした。ただ、おそらくブラッシングによるものかと思われますが、ステッチのほつれがあちこちに見られたため、その補修作業に多くの時間を費やすこととなりました。写真は例によって仕上がり後のもの。ステッチの乱れはすっかり収まり、なかなか良い雰囲気に仕上がったのではないかと感じています。

2503161920-7

セミドレス系の佇まいを持つ靴ということもあり、トゥとヒールカップにだけ、控えめにワックスを使って艶を強調しました。ただし、毎度のことながらナチュラルな質感を損なわないことを最優先にしています。一見すると美しく見える強い光沢も、もちろんお好みによっては良いものですが、私自身は革そのものの質感を楽しんでいただきたいと考えています。

2503161920-5

私もかつては鏡面磨きこそ正義!と思っていた時期がありました(笑)。もちろん、それで生計を立てておられる方々の技術と美意識には心から敬意を抱いています。ただある時、あるメーカーの方から「やり過ぎでは?革の本質を見失っていないか」と言われ、ハッとさせられました。それ以来、革本来の美しさに目を向けるようになったんです。

2503161920-8

あまりにツヤツヤな仕上がりは、確かにマニアの方にはウケるかもしれませんが、全体のバランスからすると、どうしても足元だけが主張しすぎてしまう印象もあります。「靴オタクですか?」と聞かれてしまうこともあるようで、それはちょっと本意ではないのかなと。

また、ワックス層は雨に弱いという性質もあります。ダメージを受けたワックス層を元に戻せる方なら問題ないのですが、ほとんどのお客様にとっては難しいものです。だからこそ当店では、扱いやすい仕上げを目指してメンテナンスを行っています。必要最小限のクリームとワックスで、できるだけ自然な革の美しさを引き出す。それが当店流の流儀です。……などと偉そうなことをつらつら書いてしまいましたが、私自身、まだまだ修行の途中。日々学ばせていただいております。