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本日クイックメンテでお持ち込み頂いたMOTOの2106ホールカットシューズのメンテ完了後の写真です。革はアメリカHorween社のLatigoレザー。オイル含有量の高いエイジングが楽しめる牛革で、メーカーのMOTOも多数のモデルを展開している革靴です。新品時はパリっと張り感のある革ですが、次第に柔らかく主人の足型に馴染んでくることで知られます。

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お客様が撮影されたお持ち込み直後の状態です。
聞くと、靴を田んぼに履いて行ったそうですが、何やら多数の水染みが付着して、「あ〜・・・」と意気消沈してしまったそうです。そこで、我々に治療のご依頼・・・という流れ(笑)
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革靴の革というのは、実は生きています。革が生きている? と思うかもしれません。
もちろん本当に生きた革を使っているという意味ではありません。では、どういうことかというと、使う間にどんどん変化する様を見せてくれるからです。

それプラス、その人の履き方やlifestyleが如実に革の表情に色濃く反映されるのも面白み。革靴初心者さんの多くは、傷が入ったり、染みが付着したりするととても心配になるのも無理はありません。今まで買ったことのない価格帯だったりすると尚更です。

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しかし、その傷や染みの一つ一つは、あなたが使った痕跡であり、記録であり、記憶です。そのどれもが唯一無二のものであり、本物の革靴だからこそ得られる表情だと思ってください。

例えれば、そうですぇ・・・例えは悪いかもしれませんが、最愛の女性と結婚したとします。とても自慢の美人の奥様だったとしましょう。その奥様は、年齢を重ねるごとに皺が増え、白髪も増えて、染みもできるかもしれません。でも、それは極自然のことだと殆どの人が理解できるでしょう。

もし、そんな最愛の奥様が、怪我をして、傷が残ったとします。あなたは、そんな些細なことで最愛の人とお別れしますか?。

念願かなって購入した革靴も使っていけば、いつかは傷つき、染みが増えていくものです。それはある意味「生きている本物の革」ならではの醍醐味です。

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革というのは、もともと生きた「」でした。
その皮を柔らかくする工程を「鞣す」(なめす)といいます。(革を柔らかにする)
出来上がった革が化けたものが「」です。

ちなみに革を包むと書いて「鞄」ですね。
しかし、こうしてみると漢字ってよくできていますよねぇ。

だから、シンセティックレザー(=合成皮革)で作られた靴は、本質的なことを言うと靴ではないのかもしれません。合皮でできた靴は、買い安くて、傷も気にならないかもしれませんが、近い将来確実にゴミになってしまう運命です。

本革靴は、メンテナンスさえ怠らなければ何年でも生きながらえることができます。合皮靴は加水分解が始まるともうどうしてみようもありません。崩壊の一途です。

本物の動物の皮の凄さを知った昔の人類が生み出した魔法のような素材。それが、革です。
この革を新品時の状態をただ維持するのではなく、傷も染みもまるっと飲み込んだ上で、自分だけの靴に育てて行くこと。
その過程が、とても楽しいものであり、素敵な時間であり、記憶として残してくれるタイムマシンのような存在が、本革靴です。

傷や染みをネガティブなものと捉えるのではなく、「いい傷が入ったなぁ」・「なんて素敵な染みができたんだ!」(笑)とポジティブに考えて、それらを生かしながらメンテナンスしてあげることで、自分だけの素敵な革靴へ成長を遂げてくれるでしょう。

奥様にも靴にも大きな愛情を持って接してあげてください!


(おまえが言うか? とは言わないで(笑))