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昨年ご自分へのご褒美でジョンロブを購入して頂いた「ンノっ」さんのCHAPELを磨きました。といっても、状態はとても綺麗なんで、補助的に短時間のお気持ちメンテですが、心を込めて。

当店には、お気に入りのオーダー靴を履いて電車で一人旅を楽しんでいるお客様もいるのですが、そんな話をしたら「へ〜いいご趣味ですねぇ!」と言ってくれました。私もそう思います。チャンスがあれば、時間を気にせず、日本全国なんなら世界中を電車で旅にでたらさぞ楽しいだろうなぁと思います。
足元には、お気に入りの靴を履いていたら充実した旅になるでしょう。

そんな話をしながらコーヒーを召し上がって頂いて、こちらでは靴を磨きながら、靴や旅の話に花を咲かせて。店内に流れるJAZZを聴きながらゆったりとした時間を過ごしました。・・・そうこうしている内に、「うーん、やっぱり買っちゃおうかな!」と今回は気になっていたというパラブーツのMICHAELをご試着されてご購入へ。いっしょにパラ純正メンテアイテム一式をお買い上げ。ジョンロブとは全く異なる世界観の靴ですから、「こういう履き心地なんですねぇ、へぇなるほどねぇ、楽しみ〜」とMICHAELの足入れ感を味わって頂きながら、近い将来の有給休暇にどこかへ履いて行きたいなぁと言っていました。

なんてことない、他愛のない会話ができる喜び。そして、こういう時間をお互い享受しあえることで、自然と幸せな気分になります。ぽかぽかとした心の暖かさに包まれたひととき。

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そして、別のお客様のお話。
あるご高齢のご夫婦が、フラっと来店されました。何もない旧い街並みのところだなぁと話しながら歩んでたら、「突然場違いな店を見つけたのでついつい入ってしまいました」と。「少し見させてください」というので「どうぞどうぞごゆりと」。

話を聞くと、なんでもリタイアされてご夫婦であちこち旅をしているそうです。高田公園の夜桜を見物に来たついでに、直江津に足を伸ばしてみようかしらと電車で来て、フラフラと港に向かって歩いていたら“こちらの店”に出会ったとのことでした。「いい靴が並んでいますねぇ、東京でもなかなかお目にかかれません」ととんでもございませんが、愛想でもそう言って頂けると嬉しいものです。少し1階で靴をご覧になられた後、「よかったら2階でお茶でも飲んでいかれますか?」とお誘い。お時間のあるお二人でしたので、「では、お言葉に甘えて」と快く召し上がってくださいました。

そんなこんな時間は過ぎて、、、「何も買う予定ではなかったのですが、気に入ったのでこちらを頂きます」とお洋服をご購入して頂いきました。現役の時は、どのようなお仕事をされていたのかまでは聞きませんでしたが、ご主人の博識を感じる落ち着いた語り口調と奥様の立ち居振る舞いと余裕に、どことなくセンスを感じさせるとても素敵で仲の良いご夫婦でした。

もしまた直江津へ来ることがありましたら、当店で過ごした時間を思い出してお立ち寄り頂けたら嬉しいですね。


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そして、こんなお客様もご来店されました。お友達とお二人でご来店されたとても若い男性のお客様です。なんでも、初めて本格的な革靴を購入する為に、当店にどんな靴があるのか見に来たようです。とても礼儀正しくて、こちらからお勧めしない限り、商品を手にとったり履いてしまったりということをしない好青年達でした。少し下調べはしてあったようで、パラブーツが気になっているそうで、名作CHAMBORDをお勧めし、試着しました。誰しもそうだと思いますが、特にこのくらい若い時に初めて出会う本格的な革靴に足を通すというのは、緊張と感動がどっと押し寄せてくるものだと思います。顔中から笑みが溢れていて、とにかく履けて嬉しい! という気持ちが伝わってくるようでした。

「実は、すぐには買えないんです。頑張って来月か再来月には買いに来たいです!」と言ってくれて嬉しかったですねぇ。一緒に来ていた友達も靴専門紙をパラパラ見ていたり、オールデンをへぇという表情で眺めていたり。聞くと実は興味あるんですとのこと。値段見るとびっくりしていたようでした。パラブーツを試着した友達に「おまえも一緒にどう?」と誘われていて「いや〜(汗)」ってね(笑)

「でもこう考えてみてください。長く愛用することを考えて、例えば20年愛着を持って可愛がって履いてあげるとして、日割り計算したらいくらでもないんですよ」と話したら、なるほどねぇ!と思ってくれたようでした。お手頃な靴を履き潰しながら何足も買うというのでも悪くはないでしょう。でも思い出が刻まれる愛着のある靴をずっと長く所有した時の喜びは、プライスレスです。

靴を購入した時の価格には含まれていない喜びが、付加価値として後から付いてきます。使い古した靴、少しくたびれてしまった靴も、新品時の時から大切に履いていく中で老いていく過程を味わうことができるのは、いわゆる本格靴と言われている靴ならではの楽しみだと思います。

まぁ、経済循環のことを考えれば、ある程度は循環してくれた方が販売店側も生産者も助かるのですが、趣味+実益を兼ねた本格革靴を楽しんでみたいということでしたら、ぜひ使い捨てではなく、いい靴と世の中で評価されている靴を1足じっくりと履いてみるのもお勧めです。きっと何か違う世界に出会えてしまうかもしれませんね。


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歳をとってから靴の世界を知ると、まぁ正直なかなか長い期間を楽しむことは体力的には難しくなってくるんです。そこいくと、若い時から始めれば、実に長い期間をかけて楽しんでいくことができます。若さの特権。金銭的にきついかもしれませんが、将来を見越していいものに触れて、所有する経験をすることは、きっと人生のプラスになると思います。

チャンスが巡ってきたら、思い切って一歩踏み出してみてください。それは、当店でなくてももちろんいいですが、それが当店だったら私たちもとても嬉しいですし、その喜びを一緒に長い間分かち合えたら楽しい人生を送れそうだと思います。少しお手伝いさせて頂けたら嬉しいです。