ストレートチップの革靴を選ぶ
ジョセフチーニーから黒ストレートチップのALFREDが入荷しました。現在ジョンロブ筆頭に様々なメーカーの黒ストを展開しているので比較をやってみようかなと思いつきました。あーでもないこうでもないと言いながら比較するって楽しいですよ(笑)肩肘張った比較はしません。良かったら見てってください。
黒ストレートチップって、基本の1足ということもあり、ほぼどのメーカーでも網羅しているカテゴリーです。そのため却って購入の際に悩むこともあると思います。基本は欲しい靴はどれか。それはブランドなのか、価格なのか、品質なのか。それとも履き心地なのか。理想は、足にピッタリあった高品質なハンドメイド。しかも価格の安いもの。・・・なんでしょうれど、そうそう都合の良いようにならないのが世の常です(笑)
各社相応に創意工夫を重ねて生み出した靴ですので、そのメーカーに見合った価格帯で展開されています。一番簡単で最良の選択方法は、最も高いところから降りていくという手法です。当店でいえばジョンロブから降りていく感じです。ここで注意したいのが、金額=クオリティーと見誤ってしまいがちなところです。今回比較に出している靴達に関しては、それはあまり当てはまらないので、金額だけに注目しないように注意しましょう。
革靴を価格順に並べてみる
さて、5足ならべてみました。壮観ですね。
左からオールデン、ジョセフチーニー、ジョンロブ、ジョーワークス2足です。
既製靴は、左3足。右2足はオーダー靴なので、直接比較はできませんが、参考にはなります。
一応参考までに価格も。高い順から
真上から見るとトゥの形状の違いが一目瞭然でしょう。
オールデンは、アメリカ靴らしくポテッとして丸いです。あっ、そうそうオールデンだけ外羽根でごめんなさい。内羽根は完売中なので、在庫のある中で国内で一番人気のあるALDENのストレートチップということで56610にしました。
チーニーと比べると指周りから爪先にかけて形状が全く違いますね。その隣のジョンロブは、さらに細くシャープです。しかし、尖っているわけではなくほんとうに絶妙なバランスです。その隣はジョーワークスのJOE-0で、セミスクエアトゥ。その木型をベースに作られたJOE-1は、オーセンティックなエッグトゥで美しいのです。
トゥの尖り具合や厚みは、こちらの写真で分かります。あなたのお好みはどれでしょうか。
革靴をヒール形状から見る
つづいては、ヒールカップです。
これがまた各社様々で面白いですね。目立つのはオールデン(向かって一番右端)。ヒールカップというか、トップラインの高さが内と外で全然違うのがわかるでしょう。モディファイドラストならではの特徴の一つなんですよ。
チーニーのアルフレッドは(向かって右から2番目)、外側が丸く内側は比較的ストンと落ちたデザイン。ジョンロブもそれに近いです。ただ、履き口の形状はまるで違いますね。ジョーワークスは、内外ともに丸いシェイプ。ヒールカップの大きさ自体は、JOE WORKSとチーニーは小ぶりの作りで日本人に良く合う設計です。ジョンロブもその次くらいに小ぶり。オールデンは、ぱっと見小ぶりに見えるかもしれませんが、それはサンプルのサイズが小さい為です。同じサイズ同士で比較すると一番ゆったりとしています。
ヒールの収まりってメーカーによって考え方が全然違っているのも面白いんです。英国系の靴は比較的小さく作る傾向があって、なるべく足にピッタリフィットさせたいという考えです。対するアメリカ靴は、ルーズにする傾向があります。文化的な違いが反映されているんでしょうけれど、そもそも靴の脱ぎ履きを頻繁にする日本人には理解し難い奥深い考え方が詰まっている部分なんだと思います。
真正面から革靴を比較する
次は真正面から甲周り(レースステイ周辺)をオールデンとチーニーで見てみましょう。
どうです? かなり個性があるでしょう。オールデンのモディファイドラストは、甲部分が外に向かって斜めになだらかに落ちていく感じ。そして、レースステイ部分は、甲のところからギュッと立ち上がっています。靴紐が斜めになっているのでわかると思います。
チーニーは、意外にもオールデンより甲周りはポッテリとしたデザイン。真正面からみると両サイドが垂直に立っています。こちらは靴紐は真横に水平に揃っています。
ブランド毎の黒ストレートチップ本格革靴を見比べる
つづいては、チーニーとジョンロブ。ジョンロブも外側へ向かって少しだけ斜めに下がったデザインです。親指の付け根付近の甲は高く設計されていて、小指へ向かうに従い低くなっています。造形的に結構攻めてあるデザイン。しかし、足入れ感がかなり良い7000番ラスト。ジョンロブは見た目では計り知れない謎の心地よさを味わえます。
つづいては、チーニーとジョンロブを真横から拝見。同じ英国靴だけあって非常に近いバランス感覚。ヒールの高さはほぼ同じです。注目したいのは、再度のリフレクション。ジョンロブは、つま先からヒールにかけて跳ね上がるようにリフレクションが走っています。対するチーニーは、S字を描くようなシルエットなんですね。トゥノーズ先端の形状の違いもよくわかると思います。めっちゃシャープで刃物のようなジョンロブに対して、ゆとりのあるチーニーという印象。
こちらはジョーワークスのJOE-1。
ジョーワークスは、オーダーメイドなので、全てがこれと同じになるわけではありませんが、非常にバランスの採れたデザインであるということは、素人目にみても感じ取って頂けると思います。
そんな訳で、駆け足でカーフ黒ストレートチップを比較してみました。良し悪しや甲乙つけ難いです。あちらを立てればこちらが立たずが靴の世界です。100%満足できる靴に巡り合えるのもなかなか難しい。でも、90%以上なら選択肢は広がります。妥協するということではなく、一歩引いてみた時に「この靴となら長く付き合えそうだな」とか「この靴なら将来的に大事に履けそうだな」という心の余裕、時間の余裕を10%は持って靴を選んでいただくと一層愛着の湧くあなただけの1足が見つかるのではないでしょうか。
この他にも革質とか縫製とか様々な視点や要素はあります。ありますが、あんまりやり過ぎてマニアックになっては意味がありません。それよりも、実物をじっくりと見て、触って、実際に履き比べて頂くことで、目指すべき黒ストレートはどれなのか、絞り込めると思います。ジョンロブ、チーニー、オールデン、ジョーワークス。錚々たる顔ぶれを実際にみれるのは当店だけの強みですので、ぜひ足を運んでみてください。
こちらは入荷したてホヤホヤのALFREDです。カタログページは作りましたので詳しいところはそちらでご覧ください。
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